研究概要 |
現在,大動脈瘤に代表される拡張病変はCT, MRIによる画像診断に負うところが多く,mass screeningには適していない.Mass screening可能な動脈疾患の非侵襲的検査の一つの手法として,とくに狭窄病変に対して脈波解析が近年脚光を浴びている.しかし,本手法による病変部を想定した模擬循環回路や動物実験での整合性の検討はなされていない.臨床応用のためには,これら実験的ステップでの実証が必要かつ不可欠である.本研究の目的は脈波解析を用いて,理論的整合性のある非侵襲的な動脈の瘤化・狭窄病変を診断方法を確立することである.方法:模擬血管回路で動脈瘤モデル・狭窄モデルを作成し,理論値での反射波の位相・時相について検討した.次いで,動物実験で大動脈瘤・狭窄病変モデルを作成し,血圧は左鎖骨下動脈にカニュレーションして測定,血流速度は大動脈表面から超音波プローブにて測定した.両者の結果の整合性を検討した.結果:理論値,動物実験で得られた値に有意な差はなかった.圧一流速曲線からの反射波計測では,動脈の任意の一点から無侵襲的に計測可能であることに加え,動脈の性状・狭窄病変のみならず拡張病変の存在が可能であった.考察:本研究で,理論値と模擬回路での整合性が明らかになった.体表面からの上行大動脈のpin point測定により.胸部・腹部大動脈瘤診断が可能になれば,予防医学的・医療経済的にもきわめて優れた診断法が確立すると期待される.
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