平成19年度の実験結果をもとに新鮮骨髄細胞を用いたin vivo Tissue Engineering骨の移植骨としての有効性を評価した。 <日本白色家兎における腰椎後側方固定術(PLF)での評価> 犬筋肉内で骨誘導を認めているポーラスHAp (A群)、骨誘導能を認めていないポーラスHAp (B群)に新鮮骨髄細胞を充填させ、日本白色家兎の筋肉内に埋入。12週後に取り出した検体を移植骨としてPLFに使用し、さらに12週間後に徒手評価、マイクロCT、力学評価において骨癒合を評価した。A群ではPLFを行った4羽中いずれも骨癒合は認めなかった。B群では7羽中4羽に骨癒合を認め、骨癒合率は自家腸骨移植を用いたPLF (6/10) (H19年度に施行)と同程度であった。力学的強度も自家腸骨を用いたPLFの値と同程度であった。組織学的評価において、骨癒合を認めたB群の検体では固定術を施行した横突起間に皮質骨の連続性を認め、多孔体内にも新生骨と骨髄組織を認めた。A群の検体では筋肉内で骨誘導によって形成された骨組織はPLF後壊死している像を示した。A群は新鮮骨髄細胞を用いることでウサギ筋肉内に骨誘導を起こすことはできたが、さらに移植骨として用いる場合には材料の吸収により適切な三次元構造が崩壊し、骨癒合を導く足場として機能しなかったと考えられた。一方、B群は吸収性が少ない材料であり、筋肉内から取り出した後に移植骨として用いても足場として機能し、生体内(in vivo)で材料内に増加した自家の骨前駆細胞や骨誘導因子による骨癒合を可能にしたと考えられた。 犬筋肉内で骨誘導を起こす材料は吸収性を認める材料が多く、今回の実験結果から考えると犬におけるin vivo Tissue Engineering骨を用いたPLFは難く、材料の吸収が少なくかつ骨誘導が起こる材料の開発が望まれる。一方、新鮮骨髄細胞と吸収性の少ない材料とを用いてのin vivo Tissue Engineeringは低侵襲であり、当初の目的である自家骨の合併症を解決できる方法となりうると考えられた。
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