制御性T細胞のマスター遺伝子とされるFOXP3と、肝移植後の拒絶反応との関係を分析し、肝移植後の免疫抑制療法の調節におけるFOXP3のモニタリングの有効性を検討した。 FOXP3蛋白については、細胞内染色によるflow cytometryでの解析が可能となったため、これまでのFOXP3のmRNAの測定からFOXP3蛋白の細胞内染色によるflow cytometryによるCD4+細胞中のFOXP3+細胞のpopulationに測定方法を変更し、肝移植後拒絶反応との関連性を検討した。 移植前、移植後1ヶ月、移植後6ヶ月の計3点で末梢血を5ml採取し、比重分離法にて単核球を分離した。 CD4の細胞表面染色とFOXP3の細胞内染色を行い、 flow cytometryにて測定した。測定者10例中4名で急性拒絶反応のエピソードを認め、拒絶群と非拒絶群でFOXP3+細胞のpopulationの経時的変化を比較検討したところ、術後1ヶ月目のFOXP3+細胞のpopulationが非拒絶群に比べ、拒絶群で有意に低下していた。 拒絶群での術前と術後1ヶ月目、6ヶ月目の比較では有意な差は認めなかった。術後1ヶ月目のFOXP3+細胞のpopulationが拒絶群で有意に低下していた要因として、拒絶反応に対する反応として末梢血中の制御性T細胞が組織へ移行したため、結果として末梢血中の制御性T細胞が低下した可能性や、逆に末梢血中の制御性T細胞の低下が拒絶反応を惹起した可能性も考えられた。 いずれにしろ、 FOXP3陽性制御性T細胞のpopulationは肝移植後の免疫応答状態を反映していると考えられ、そのモニタリングは免疫抑制療法の調節の指標となる可能性が示唆された。
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