研究概要 |
ラットを用いて気管を腹部大網内に移植した。対照群を同系移植(LEWラット->LEW)とし,同種移植群(BN->LEW)(同種免疫応答が介在),脱上皮処理+同系移植群(LEW->LEW)(同種免疫応答非依存性)を実験群とした。大網に移植した気管はOTCコンパウンドにより凍結保存した。その凍結材料を厚さ10mmで薄切しプレパラートに付着後エタノールー酢酸にて固定した。それらを脱ヌクレアーゼ水で処理し、組織片よりtotal RNAを抽出してプローブ用aRNAを合成した。aRNAはcy3あるいはcy5でラベルし、マイクロアレイ解析を行った。得られた結果に基づき発現変動遺伝子を抽出し、遺伝子オントロジー解析やパスウェイ解析を行い検討した。同系移植した気管(ISO気管)、同種移植した気管(ALLO気管)、同系移植ではあるが気管上皮を脱落処理した後同系移植した気管(Denude-ISO気管)の3群間で明らかな差異が認められた。すなわち、ALLO気管ではT細胞やB細胞の活性化や細胞遊走に関わるケモカインの発現が顕著であった。一方でDenude-ISO気管ではMHCに基づく免疫応答の充進は認められなかったものの、ニューロペプチドYやバゾプレシンなどのホルモン受容体に関わる遺伝子発現の増加が認められた。他にもDenude-ISO気管特異的な発現を示す遺伝子群があり、これらの機能的意義について今年度解析を進めて行きたい。
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