血液型不適合移植時に障害となる免疫学的因子は抗血液型抗体の存在である。血液型抗体は10歳までの間に大腸菌などの体内細菌に反応して作られる自然抗体である。すなわち抗体のサブクラスとしてはIgMに属するといわれる。既存抗体として生まれながらにしてヒトはこの抗体を有しているために血液型を超えた臓器移植時には抗体関連を伴うはげしい拒絶反応に見舞われる。すなわちこのような移植を施行する際には移植前にできるだけ低抗体価まで下げておくことが必要であった。 抗血液型抗体は基本的にIgMサブクラスに属すると考えられている。しかし同時にIgGの存在は明らかであり特に血液型O型のレシビエントの体内に存在する血液型抗体はそのほとんどはIgGサブクラスである。そこで血液型不適合移植を施行した後に産生される抗血液型抗体の種類を再度解析することによって抗体別による拒絶反応との関連性、さらにこのような抗体を産生するリンパ球の種類を分析しレシビエント対内に起こる免疫反応、免疫抑制剤の寄与を解析することを目指した。血液型不適合移植後に拒絶反応をおこし移植腎にまで至る患者および起こさないで成功生着に至る患者では全く異なる液性の免疫反応が起こっていることを解明した。 臓器移植で問題になる免疫学的障害はヒトの場合は血液型抗体と抗HLA抗体である。前述のような比較的理解しやすい血液型抗原と抗体の拒絶反応時の機序の解明より最終的にはさらなる抗HLA抗体の解明へとつながることが期待されと思われる。 今後はHLA抗原と抗HLA抗体について解明を進める。HLA抗原は蛋白であり抗体との結合を調べる上で塩基配列が重要である。塩基配列をさらに明らかにして抗原抗体反応の結合の場である塩基相補部位(CVR)を基に反応しやすい抗原及び抗体の構造を明らかにしたい。
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