研究概要 |
平成19年度は下記の計画に従って,サルのモデル(膵臓亜全摘+自家膵島移植)において,活性化プロテインC(APC)とその他の臨床応用可能な薬剤の中で凝固系あるいは非特異的炎症抑制効果を有する薬剤(FOY,プサン,フラグミン,エラスポール,ラジカットなど)を,使って移植後の膵島の生着改善効果の有無を判定する計画であった。 (1)膵臓亜全摘出術:全身麻酔下に,腹部正中切開で開腹して,脾臓と共に膵体尾部を剥離し,門脈の直上で膵をリニアーカッターで切断し膵体尾部を摘出する。膵摘出後は止血を確認し,閉腹する。 (2)膵島分離:摘出後,直ちに主膵管よりリベレース溶液を注入し,膵体尾部を消化する。消化した膵組織より比重濃度勾配により,膵島を外分泌組織から分離し,1週間〜10日間培養する。 (3)糖尿病誘発:手術後4日目に全身麻酔下にSTZ125mg/kgを投与し糖尿病にする。その後,空腹時血糖200mg/dl以上が2回連続した時点で糖尿病と診断し,診断後2日以内に分離した膵島を自家移植する。 (4)膵島移植:全身麻酔下に腹部に小切開を加えて小腸を体外に誘導し,その腸間膜の静脈に20Gのアンギオキャスを留置し,膵島3000個/kgを注入する。注入された膵島は腸間膜静脈から門脈を経て臨床と同様に肝内に生着する。 1頭目は体重8kgに対して膵島が約8000個しか分離できず,移植基準(3000個/kg)に満たなかった。2頭目では体重10kgに対して膵島38250個を分離した。その後,計画通り,薬剤にて糖尿病を誘発した後に,分離した膵島を自家移植した。2頭目はコントロール群であったため,APC等の薬剤は使用しなかった。移植後,サルの血糖はやや低下したが,移植後4週目と8週目の耐糖能試験では耐糖能異常を認めた。
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