研究課題
原発巣より血中に遊離した乳癌細胞を同定する方法としては、過去に免疫染色やRT-PCRなどいろいろなものが提唱されてきたが、癌細胞を間接的に同定するものである。今回我々は、本邦で初めて癌細胞を直接同定する方法として、「臨床検体に対してISET(Isolation by Size of Epithelial Tumor Cells)のシステム」を確立するための研究を開始した。まず、ISETシステムの感度を測定するために、乳癌細胞株6株を用いて、PBS中に直接これらの細胞の数を測定して注入し、ISETシステムでどの程度その細胞を捕らえられるかどうかを調べた。sensitivity testにおいて、6種の乳癌培養細胞において約50%の回収率を得た。ISET filter上の細胞に対して免疫染色を行ったところ、SK-BR-3ではER(-)、PgR(-)、HER2(+)、MCF-7ではER(+)、PgR(+)、日ER2(-)を示した。これらの染色結果はいままでこれらの細胞の染色性について報告されてきたものと相違ない。このことからISETsystemにおいて細胞の抗原性は損なわれないことが示された。またISET filter上のT47-D細胞1個を切り出してp53 exon6特異的primerを用いてPCRを実施しそのPCR productをシークエンスにて読んだところ、T47-D細胞が持つCodon194のCTTからTTTへのpoint mutationが確認された。SK-BR-3細胞はHER2遺伝子の増幅が知られているがISET filter上のこの細胞に対してFISH法を試みたところ確かにHER2遺伝子の増幅が蛍光シグナルで確認でき、ISET systemを実施した細胞ではDNAが種々の検査に十分対応できる程度に保存されていることがわかった。したがって、ISETシステムでは、1ml中に数個しか乳癌細胞がなくても直接検出することが可能で、さらに検出した細胞は、複数の方法で確実に乳癌細胞であることを証明できた。
すべて 2008 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
J Nol Urem. 283(36)
ページ: 24426-24434
http://www.surgl-hokudai.jp/shinryou/nyusen/index.html