ウイルスベクターを介してサイトカイン等の治療遺伝子を導入した樹状細胞は癌免疫療法の画期的な手法になると考えられているが、臨床試験薬としての遺伝子導入樹状細胞の品質を定めた公的な基準は存在せず、各実施機関の判断に任されているのが現状である。そこで我々は最終産物である遺伝子導入樹状細胞の品質評価システムの開発を目的として、原料となるベクターと細胞のそれぞれの品質・安定性を明らかにし、その結果をふまえた遺伝子導入樹状細胞調製法の検討を行った。平成20年度は、ベクターにおいては、調製したhuman IL-12遺伝子発現アデノウイルスベクターの安定性を引き続き検討し、TCID50法による感染力価、および感染指標細胞にA549を用いたIL-12タンパク産生能評価に関して、製造後30か月までその品質が失われていないことを確認した。一方、細胞においては、臨床研究に用いられる培養容器の主流がプラスティックディッシュから閉鎖系の培養バッグに移行していることを勘案し、本研究の細胞調製法をフッ素樹脂製ガス透過性培養バッグに切り替えた。そこで、品質評価項目を再検討し、遺伝子導入工程のもたらす細胞への影響をより詳細にとらえるため、細胞表面抗原の発現解析の他に微分干渉観察、および蛍光色素標識細菌を用いた食作用の観察を加えた。今後、さらに評価項目の検討を行い、調製した遺伝子導入細胞の安定性評価、ならびに培養バッグの特質を活かした遺伝子導入方法の開発を進める。
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