研究概要 |
この乳腺の解剖学的特徴である乳頭から続く乳管ネットワークを利用し,乳癌およびその発生母地である乳管上皮細胞へと抗腫薬剤を到達させる新しい発想に基づいた低侵襲治療法の治療効果とその効果の発現機序解析を研究の目的とした。 マウスはHER2/neu transgenic mouse(neu-N)を用いた。neu-Nマウスでは乳腺にHER2/neuタンパクの過剰発現がおこるため、生後4ケ月より自発乳癌が多発発生する。 乳管内にDoxi1または5-FUを注入すると,乳癌治療効果および予防効果が見られた。これら抗ガン剤注入後の経時的な乳腺組織の変化を病理組織で調べたところ,Doxilでは,終末乳管に炎症があり小葉の再生が認められなかった。5FUでは炎症は軽微にしか認めず,終末小葉構造は保たれていた。 抗ガン剤を使った早期の乳癌局所療法が,乳房の形態を保ちながら施行できる可能性があり,臨床応用の可能性が高くなった。Doxil注入後にもし小葉の上皮再生が起こらないとすると,Doxilの乳管内治療により,乳癌high Risk patientsの乳癌発生予防ができる可能性がある。
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