研究概要 |
消化器癌における癌幹細胞のマーカーを明らかにするとともに、その生物学的特徴を明らかにすることを第一目標として研究を行った。われわれは、ヒト肝細胞癌株化細胞を用いて、初めて癌幹細胞の存在を明らかにした(Haraguchi,Tanaka et al.,Stem cells,2006)。最終目標である癌幹細胞を標的とした特異的免疫治療を実施するために、マウス肝細胞癌細胞株MH129を用いて癌幹細胞の同定を進めた。ヒト肝癌細胞HuH7の癌幹細胞同定と同じ手法のSP成分をソーティングし、培養実験を行ったが、MH129では癌幹細胞成分は得られなかった。そこで、新規同定方法として、癌幹細胞が長期生存できるという性質を考慮し、細胞周期が停止しているGO期に着目した。FACSを用いてGO期細胞をソーティングした後に、in vitroで増殖能、コロニー形成能を解析した。 その結果、in vitroでは非GO期細胞と比較してGO細胞が増殖能、コロニー形成能に優れ、かつ肝臓細胞のマーカーであるアルブミンのみならず胆管細胞マーカーのKRT19を発現することが示された。すなわち、多分化能を有することを示した。また、未分化な細胞であることを示す表面マーカーの一つであるKRT14の発現をGO細胞でのみ認めた。またin vivoにおける腫瘍造成能にも優れていることが初めて明らかにされた。また、無血清培地において肝細胞、胆管細胞へ分化させる因子を混合培養することで、それぞれの成分への分化を実施している。また、薬剤耐性に関して、ABCトランスポーター遺伝子に依存するアンソラサイクリン系抗癌剤のみならず、多種の抗癌剤を用いて耐性実験を行っている。又同時に、4万4千遺伝子搭載オリゴマイクロアレイを用いて遺伝子発現解析を行った。本解析の結果、GO細胞群特異的な候補遺伝子群の同定がなされた。
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