研究課題/領域番号 |
19591510
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
定永 倫明 九州大学, 医学研究院, 非常勤講師 (20304826)
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研究分担者 |
塩谷 聡子 九州大学, 大学病院, 医員 (90419549)
掛地 吉弘 九州大学, 医学研究院, 准教授 (80284488)
沖 英次 九州大学, 医学研究院, 非常勤講師 (70380392)
森田 勝 九州大学, 大学病院, 講師 (30294937)
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キーワード | 乳癌 / ROCK / リンパ節転移 |
研究概要 |
【背景】ROCK蛋白は、細胞運動調節機構に必須とされるRhoのeffecterとして知られ、活性型Rhoによってリン酸化されて活性型ROCK(p-ROCK)となる。Rho/ROCK経路が癌細胞の浸潤・転移に強く関与することは既に分っているが、ROCK蛋白の発現及び活性化の臨床病理学的意義についての報告はない。【目的】乳癌組織におけるROCK/p-ROCK発現意義について臨床病理学的に検討する。【対象と方法】原発性乳癌手術症例220例(平均観察期間;3.96年)を対象とし、ROCK、p-ROCKの発現について免疫組織染色を用いて評価した。【結果】浸潤性乳管癌において、ROGKは細胞質に発現しており、67.3%(148/220)に強陽性であった。また活性型のp-ROCKは核に発現しており46.8%(103/220)に強陽性で、興味深ことに、浸潤部で強発現している特徴があった。正常乳腺組織、線維腺腫、DCISでの発現は亢進していなかった。臨床病理学的検討では、活性型であるp-ROCKの発現はリンパ節転移(p〈0.0001)、リンパ管侵襲(p〈0.05)と有意な相関を認め、p-ROCK陽性例で有意に予後が不良であった(p=0.014)。【考察】活性型ROCK(p-ROGK)は乳癌の進展、特にリンパ節転移と強く関与し、予後とも強い相関を示した。ROCK特異的阻害剤の中には既に臨床応用可能な薬剤もある。これらを用いてROCK蛋白の活性化を制御することにより乳癌の予後が改善できる可能性がある。ROCK特異的阻害剤は今後の乳癌薬物治療における新たな分子標的として期待できる。(690字)
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