日本人由来の肺癌セルラインを樹立し、遺伝子、蛋白質等を調べ、さらに実験などに利用し、最終的に肺癌の診断、治療に役立てる事がこの研究の最終的な目的である。そのために我々は米国にてこれまで数多くのセルラインを樹立してきたテキサス大学サウスウエスタンメディカルセンターのAdi.F.Gazdar教授とコンタクトをとり、10日間で基本的なセルライン樹立のためのノウハウを学んだ。帰国後、当院倫理委員会の承認が8月に得られ、8月下旬より研究を開始。肺癌患者の手術検体から癌細胞を採取し、初代培養を行ってきた。当初、2年間の20個のセルラインを樹立する予定であったが、研究開始の時期が遅れたため、樹立したセルラインは10に留まっている。病理組織学的には原発性肺腺癌5例、転移性肺腺癌1例、大細胞神経内分泌癌1例、多型癌1例、癌肉種1例、横紋筋肉種1例である。腺癌5例中1例はEGFRの突然変異を、1例にはEGFRとKRAS両方の突然変異を認めた。樹立されたセルラインは悪性度の高いものであり、これらのセルラインを調べるじにより、様々な遺伝子や蛋白質異常が発見される事が期待される。特に大細胞神経内分泌癌のセルテインに関してはマイクロアレイによるDNAレベルの解析の結果、数多くの遺伝子異常を認めた。また、付着型と浮遊型の2つの形態をとる事が観察された。その増殖過程は、最初にフラスコ底に付着してから増殖し、一部が浮遊してくるというもので、その現象はあたかも癌の接着と遊離を惹起させるものであり、その違いを調べる事により転移に関係している因子を見つける事が出来る可能性がある。実際に、浮遊している細胞と付着している細胞を別々に採取し発現蛋白質を調べた所、数多くの相違点が認められた。その結果の一部を日本、及び米国の癌学で報告した。また、糖鎖構造に関して産総研の糖鎖医工学センター依頼し解析中であると同時に国内特許申請中である。以上に結果に関いては論文を執筆中である。他のセルラインに関しては予算の都合により解析が滞ってる状况である。
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