研究課題/領域番号 |
19591525
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研究機関 | (財)放射線影響研究所 |
研究代表者 |
濱谷 清裕 財団法人放射線影響研究所, 放射線生物学・分子疫学部・細胞生物学研究室, 室長 (80344414)
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研究分担者 |
江口 英孝 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (00260232)
伊藤 玲子 財団法人放射線影響研究所, 放射線生物学・分子疫学部, 研究員 (30283790)
早田 みどり 財団法人放射線影響研究所, 長崎疫学部, 副部長 (00359457)
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キーワード | RET / PTC再配列 / BRAF点突然変異 / 甲状腺乳頭がん / 原爆被爆者 / 放射線関連がん |
研究概要 |
放射線関連成人甲状腺乳頭発がんの分子特性を明らかにするために、その第一歩として1956年から1993年の間に原爆被爆者に発生した成人甲状腺乳頭がん71症例(50症例の放射線被曝者と21症例の非被曝者)のホルマリン固定、パラフィン包埋がん組織におけるRET遺伝子の再配列(RET/PTC再配列)とBRAF遺伝子の点突然変異を調べ、放射線量および被曝から診断時までの経過年数との関連について検討した。 被曝甲状腺乳頭がん50症例中、RET/PTC再配列とBRAF点突然変異を同時に有する症例は一例もなく、これらは排他的に起こっていたので、RET/PTC再配列を有する11症例、BRAF点突然変異を有する28症例およびいずれの変異も有さない11症例の3群に分けて、被曝線量との関係について検討した。RET/PTC再配列を有する症例はBRAF突然変異を持つ症例に比べ、有意に被曝線量中央値が高値を示した。興味深いことに、これらいずれの遺伝子変化も示さない症例の被曝線量中央値も510mGyと高い値を示した。 さらに被曝群を被曝線量の3分位で分け3群とし、各群における遺伝子変化の相対頻度を比較した結果、RET/PTC再配列は放射線量の増加にともないその相対頻度が有意に増加した。一方、BRAF点突然変異の相対頻度は被曝線量が高くなるにつれ、有意に減少した。 次に被曝から診断までの期間について比較した。RET/PTC再配列を有する症例はBRAF点突然変異を有する症例に比べ、有意に診断までの期間が短かった。これらの結果より、RET/PTC再配列は放射線関連甲状腺発がんにおいて重要な役割を果たすことが示唆された。今後さらに症例数を増やすとともに、他の変化についても検討する。さらに、in vitroの実験を用いて甲状腺細胞におけるRET/PTCの生物学的意味についても検討する。
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