研究概要 |
ラットに胃全摘術を行った後十二指腸食道逆流モデルを作成し、ウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid, UDCA)、メシル酸カモスタット(camostat mesilate, CMM)の投与及びそれらの併用(UDCD+CMM)を行うことにより、逆流性食道炎からバレット食道上皮を経て食道腺癌の発生に至るまでの過程を予防できるかどうかを検討した。その結果UDCA投与群はcontrol群に比してバレット食道、異形成、腺癌の発生は有意に低率であった。採取した胆汁の分画に関しては、control群ではUDCAが1.2%、UDCA以外のその他の分画が98.8%であったのに対して、UDCA投与群ではUDCAが69%、それ以外の分画が31%であった。以上よりUDCAは細胞毒性の強い内因性胆汁酸の割合を減じることにより、十二指腸液の逆流によるバレット食道や食道発癌を抑制し得ることが示唆された。現在、胆汁酸のリセプターであるFXRやcyclooxygenase-2, ornithine decarboxylaseなどの発現、prostaglandin E2の産生量を検討している。また、CMM投与群、UDCA+CMM併用群についても調査を行う予定である。今回の実験により、胆汁と膵液の食道発癌への関わりと、それらの阻害剤の有効性が示されると考えている。その結果、増加する逆流性食道炎の患者にとって、食道腺癌へ進展するリスクが低減されると思われる。
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