研究概要 |
消化管周囲の所属リンパ節は,消化管内の食物や細菌などの異種抗原に対する消化管免疫や消化管粘膜に発生した腫瘍細胞に対する腫瘍免疫に重要な役割を果たしており,なかでも樹状細胞(Dendriticcell;DC)は強力な抗原提示細胞として注目されている。胃癌のリンパ節転移のうちMicormetastasisと呼ばれる微小なリンパ節転移は,宿主の免疫により排除される可能性も含め実際にリンパ節転移として成立していくかどうかは未だ議論の分かれるところである。本研究では胃癌患者の所属リンパ節内での免疫応答としてDCの活性化に着目し,胃癌リンパ節における微少転移の発生とDC活性化を指標とする腫瘍免疫の関係を外科的に切除された臨床検体を用いて解析し,リンパ節転移成立と免疫応答の関係を明らかにする事を目的とする。当該年度においては胃癌切除例での郭清リンパ節の収集とリンパ節内の微小転移の検出ならびに免疫組織学的に成熟DCの分布や細胞量の観察を行った。まず4例の組織学的リンパ節転移陽性胃癌患者に対し所属リンパ節郭清を伴う根治手術を施行し119個のリンパ節を摘出した。郭清リンパ節に対しS100,CD83の免疫組織染色を行いDCを観察,さらにCK19ならびにCAM5.2を用いた免疫染色により転移の検出を行い。転移とDC活性化の間係を検討した。その結果リンパ節転移の程度による成熟DCの分布及び細胞密度に違いは認められなかった。上記結果より顕微鏡的に観察可能なレベルのリンパ節転移が成立した状態では既にDCによる免疫応答が終了していると考えられた。そこで次に25例の術前リンパ節転移陰性胃癌患者に対し所属リンパ節郭清を伴う根治手術を施行し合計613個のリンパ節を摘出した。病理学的に全例リンパ節転移陰性であり,今後これらのリンパ節内での微小転移とDC活性化をRT-PCR法を用いて検討することにより,より早期の段階での免疫応答反応を検索していく予定である。
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