研究概要 |
【目的】近年消化管がんに対する内視鏡的腫瘍切除術の進歩により,適応症例が重複する光線力学的療法(PDT)の施行数が激減している。内視鏡的腫瘍切除は技術が高度化され,施設が限定されるため,病変にレーザー光を照射するだけのPDTの簡便性は魅力的である。消化管癌へのPDTは現在フォトフリンが保険適応を受けているが,4週間以上の光線管理が必要なため,PDTの普及を鈍化させている。一方,フォトフリンでは光線過敏症の問題から短期間の追加治療が不可能であり,レーザー照射中に組織障害を来たさないPDTにとっては不利な条件となる。このため,フォトフリンより光線過敏症が軽微なTalaporfin sodium(NPe6)によるヒト胃癌に対するPDTの開発を目的とした。 【方法】ヌードマウス背部皮下にヒト胃がん株MT2を移植し,腫瘍径が7〜8mmに達した時点でPDTを行った。NPe6:10mg/kgを静脈内投与2時間後に半導体レーザーを用いてレーザー照射した(波長:664nm,照射エネルギー密度:100J/cm^2)。 【結果】NPe6、PDTの抗腫瘍効果はCR:87.5%(7/8)であり,同様のフォトフリン、PDT(62.5%,5/8)と同等以上の抗腫瘍効果であった。その後12週間経過観察したが,腫瘍の再発を認めなかった。 【結論】NPe6、PDTのヒト胃がんに対する抗腫瘍効果は従来のフォトフリンに勝るものであった。
|