テロメラーゼ構成分子であるhTERT遺伝子のプロモーターでアデノウイルスの複製に必須のE1遺伝子の発現を制御することでテロメラーゼ活性を持つ癌細胞で選択的に増殖し破壊する腫瘍融解ウイルスがテロメライシンであるが、そのウイルス製剤にさらに蛍光蛋白質GFP遺伝子を組み込むことで、癌細胞を蛍光色素GFPで可視化させるウイルス製剤がOBP-401である。まず、胃癌、大腸癌細胞のhTERT発現をみたところ、胃癌細胞株MKN28、MKN45、大腸癌細胞株SW620、HT29では正常細胞よりも高い発現が観察され、テロメラーゼ活性を有することが示唆された。またこれらの細胞株はアデノウイルスの感染が成立することから、テロメラーゼ活性を標的としたアデノウイルス製剤による治療の妥当性が示唆された。本研究においてはリンパ節内に存在する癌転移巣に対する治療効果を検討することが目的であるため、まずin vitroの実験としてヒト正常白血球と大腸癌細胞HT29細胞を混合培養し、その中でOBP-401が選択的に癌細胞を攻撃できるか検討を行ったところ、白血球との混合培養の条件下でも癌細胞数を減じることができた。in vivoの実験として、まずSW620皮下腫瘍モデルを作製し、OBP-401の腫瘍内投与を行ったところ投与翌日から3週間目まで腫瘍内にびまん性にGFPの発現が得られ、効率よくin vivoでもウイルスの感染が成立することが確認された。また直腸癌の同所性モデルを作製するためHT29細胞をヌードマウスの直腸粘膜下に移植したところ、直腸腫瘍が形成され、腹腔内リンパ節転移も形成することが確認された。マウスでの同所性癌によりリンパ節転移を形成するモデルはHT29細胞でしか、現在のところ成功していないため、今後はHT29同所性大腸癌のリンパ節転移モデルを用いて、転移リンパ節への治療効果を検討していく予定である。
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