消化器癌治療の個別低侵襲化の新たな治療戦略の開発に向けて、テロメライシンを用いて微小リンパ節転移に対するウイルス療法の効果の検討を行った。H19年度に作製したマウス直腸へ大腸癌細胞HT29の移植による同所性腫瘍モデルにおいてリンパ節転移を形成することが確認された。その直腸腫瘍にインジゴカルミン染色液を注入し、腫瘍から所属リンパ節までのリンパ流が実体顕微鏡下に確認された。同所性直腸癌モデルの直腸腫瘍内にGFP発現テロメライシンを投与後に開腹し、高感度蛍光観察システムでリンパ節転移病巣内でのウイルスの増殖を観察したところ、直腸腫瘍部だけでなく転移リンパ節にもGFP蛍光を認め、転移リンパ節ヘテロメライシンが到達、感染し増殖していることが確認された。直腸腫瘍へのテロメライシンの投与後のリンパ節転移への治療効果の評価法として新たな技術の確立を行った。ヒトDNAに特異的なAlu配列に対する定量的PCRを用いて、マウス組織内のヒト癌細胞量を定量化を検討し、その定量化が可能であることが確認された。同所性直腸癌モデルに3回テロメライシンを投与し、35日目にマウスを犠牲死させ腹腔内リンパ節転移を観察したところ、リンパ節転移病巣が減少しておりリンパ節転移への治療効果が確認された。さらに、その結果をヒトDNAに特異的なAlu配列に対する定量的PCRを用いて、リンパ節転移を定量したところ、テロメライシンの投与により有意にリンパ節内のヒト癌細胞量が減少しており、リンパ節転移への治療効果が確認された。テロメライシンは癌の原発巣とともにリンパ節転移をも治療できる可能性が示された。テロメライシンによる原発巣の治療効果に加え、かつ原発巣内に投与されたテロメライシンによりリンパ節転移を治療することも可能になれば、消化器癌治療の個別低侵襲化の新たな治療戦略の発展に寄与する可能性が示唆された。
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