研究期間の2年目である本年度は、私共が作製した大腸上皮細胞特異的ノックアウトマウスの標準モデルの確立と、それを改良した新規モデルの作製に取り組んだ。(1)標準モデルについては、学内の遺伝子組み換え生物の使用許可を受けた後、凍結受精卵から成人マウスへ戻して継代可能であることを確認後、凍結受精卵を再度作製しバックアップした。マウスの尾から染色体DMを抽出しPCR法によって遺伝子型を調べ、CDX2P-CreとApc-loxPの両方の相同遺伝子をもつ実験マウスと対象マウスを比較したところ、実験マウスでの腫瘍発生の程度や期間などが確認でき、このモデルの再現性を確認した。また、これら標準マウスモデルに高脂肪の食餌を与えて通常の飼料と比較したところ通常の飼料では腫瘍の発生率が低く、高脂肪食での研究、評価が必要であることがわかった。今後、この標準モデルをスタンダードとして、薬剤や食餌などが大腸癌発生に与える影響の検討を開始することが可能となった。(2)私共が確立したもう一つの大腸進行癌モデルは大腸上皮細胞特異的、遺伝子発現誘導型モデルについても、プロトタイプができた。Cre遺伝子の第1コドンと第2コドンの間に19-22個のグアニン塩基の繰り返し構造を挿入して遺伝子の発現をマイクロサテライト不安定性に依存して遺伝子発現の制御がマウスの大腸上皮細胞でも可能であることが本研究でわかった。さらに挿入するグアニン塩基の数やトランスジーンのコピー数を調節して、新しいトランスジェニックマウスが作製されてきており、遺伝子改変を行うためのトランスジーンの調整が終了した。今回の大腸進行癌マウスモデルの確立により、これを応用した遠隔転移をもつ新規モデルを作製することが可能となった。
|