研究概要 |
Vascular endothelial growth factor (VEGF)-DおよびそのレセプターであるVEGFR-2,VEGFR-3に対する中和抗体を用いたマウス実験を行い,in vivoにおける血管新生,リンパ管新生について検討を行った.まずVEGF-D導入ヒト腫瘍細胞をマウスに接種したリンパ節転移モデルを作製し,抗VEGFR-2,抗VEGFR-3,抗VEGF-D抗体による治療効果を比較した.また腫瘍組織のPECAM-1,LYVE-1による免疫組織染色を行うことで腫瘍血管新生,リンパ管新生を評価した.その結果,以下の知見が得られた.1)VEGF-D導入により腫瘍組織の血管新生,リンパ管新生を誘導,リンパ節転移が促進された.2)抗VEGFR-3あるいは抗VEGF-D抗体による治療では腫瘍の縮小効果は不十分であったが,リンパ管新生,リンパ節転移は抑制された.3)抗VEGFR-2抗体による治療では腫瘍増大を抑制できたが,リンパ節転移に対する効果は乏しかった.4)抗VEGFR-3抗体と抗VEGFR-2抗体の併用により腫瘍増大およびリンパ節転移の両方が十分に抑制された.5)抗VEGFR-2抗体のみの治療では腫瘍に対する縮小効果は認めたものの腫瘍中のLYVE-1発現密度はむしろ上昇した.以上のことから悪性腫瘍の治療では腫瘍増大を抑えると同時に転移抑制を考慮した治療,つまり血管新生とリンパ管新生の両者を標的とした治療が必要であることがわかった.
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