研究概要 |
新生リンパ管,新生血管それぞれのマーカーであるLYVE-1,PECAM-1の発現とVEGF family receptorであるVEGFR-2,VEGFR-3の同一切片での発現をみるためにImmunofluorescence Double Immunostainingを行った.その結果,抗VEGFR-2抗体単独では腫瘍内LYVE-1の発現密度が上昇していたのに対し,抗VEGFR-3抗体投与ではLYVE-1発現密度が低下していた.以上のことから,1)抗VEGFR-2抗体投与により腫瘍縮小が得られ新生リンパ管数の絶対数は減少するものの,リンパ管密度はむしろ上昇するためリンパ節転移を完全には抑制しきらないこと,2)抗VEGFR-3抗体は新生リンパ管数,リンパ管密度ともに抑制するために完全にリンパ節転移を抑制しうることがわかった.さらに臨床検体を用いた研究ではリンパ節転移のみならず,初期段階である微小転移にもリンパ管新生が関与していること,癌幹細胞マーカーであるCDI33がVEGF-C発現,リンパ節転移と関連が認められるとともに,ケモカインの一つであるCXCL12発現もリンパ節転移と関連があることが示された.本研究により癌治療を行う上でリンパ管新生および血管新生を標的とすることは臨床上も現実的であり,その際のターゲットとしてVEGF-D, VEGFR-2,VEGFR-3が有用であることが示された.
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