本研究において本年度は、DNAトポイソメラーゼIにおける転写メカニズムについて調査研究を行った。まず、ヒストンのアセチル化による転写活性化、また脱アセチル化による転写の不活性化ということに着目し調べることによって、大腸癌におけるDNAトポイソメラーゼI阻害剤の効果についての予測、さらには強調効果の期待が考慮される薬剤に関し検討を行った。 これまでに、複数の大腸癌細胞株を用いた実験を行った結果、HDAC阻害剤となっているTSAを投与することによって、DNAトポイソメラーゼIにおけるプロモーター活性およびmRNAの発現量がともに増加することが明らかとなった。また、DNAトポイソメラーゼIの阻害剤であるカンプトテシンとTSAを併用することによって、単剤のみの殺細胞効果より併用剤の方が殺細胞効果が高いことが明らかとなった。その効果的投与方法としては、TSAをカンプトテシンより先に投与することによって、同時投与またはカンプトテシン投与後にTSAを投与する方法よりも殺細胞効果が高いことが明らかになった。
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