研究概要 |
胃癌の術後、めまいやふらつき、手指のしびれなどを訴える症例について神経内科に併診し、その原因のひとつがビタミンEの欠乏であることが示唆された。そこで胃癌手術後に脂溶性ビタミンが低下するのか否かをみるため、胃癌術後の患者を対象とし、同意の得られた症例に採血検査と神経内科の診察をおこなった。対象と方法再発を認めない胃癌術後55例(性;男性35例、女性25例、平均年齢;66.7歳、術式;胃亜全摘術Billroth-I法再建術23例、胃亜全摘術Billroth-II法再建術5例、胃亜全摘術Roux-Y再建術1例、胃全摘術Roux-Y再建術26例)を対象とした。血中ビタミンA,EおよびビタミンB12、葉酸、総コレステロール、中性脂肪、総タンパク、アルブミン、白血球数、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板と身長、体重を測定しBMIを算出した。また他の胃癌術後再発を認めていない22症例(性;男性17例、女性5例、平均年齢;61.9歳、術式;胃亜全摘術Billroth-I法再建術13例、胃亜全摘術Billroth-II法再建術5例、胃全摘術Roux-Y再建術4例)でビタミンDの血中濃度についても検討を加えた。結果55例中1例(1.8%)に血中ビタミンA値の低下が、12例(21.8%)に血中ビタミンE値の低下がみられた。ビタミンE低下例では術後経過期間が長く、ビタミンA値、総コレステロール値が低下、白血球数が増加していた。食物が十二指腸を通過しない再建術式でビタミンEの有意な低下を認めた。ビタミンEの低下は総コレステロール低下が最も関連が強かった。ビタミンEの投与は有効であったが継続投与が必要であった。ビタミンDは活性型の1,25(OH)_2ビタミンDは正常であった。考察胃癌術後ビタミンEの低下は稀なことではないことがわかった。ビタミンAとDはビタミンEよりも低下しにくいものと考えられた。 めまいなどの神経症状があり、総コレステロール値低下がみられる症例ではビタミンEが低下している可能性がある。治療にはビタミンE剤の経口(150-300mg/日)の継続投与が有効のようである。
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