大腸癌の増殖、進展、転移において血管新生は重要な因子である。VEGFは血管新生因子の中でも最も強力な因子と考えられており、腫瘍血管新生の中心的役割を担っている。そこで、新しく開発されたVEGFRリン酸化阻害剤Ki23057による大腸癌の増殖および肝転移抑制効果を検討した。 【材料と方法】Ki23057が血管内皮細胞および大腸癌細胞株LM-H3、LoVo、LS174Tの増殖におよぼす影響をcell count assayで検討した。血管内皮細胞のアポトーシスにおよぼす影響をflowcytometryにて検討した。Ki23057が血管新生におよぼす影響を血管内皮細胞の管腔形成能により評価し、血管内皮細胞に発現しているVEGFR2のリン酸化におよぼす影響を免疫沈降法にて検討した。LM-H3を用いてヌードマウスの皮下に腫瘍を作成しKi23057の腫瘍増殖抑制効果を検討した。また、皮下腫瘍の腫瘍血管数を測定することにより血管新生阻害効果を検討した。さらに、LM-H3ヌードマウス肝転移モデルを用いてKi23057の肝転移の抑制効果についても検討した。 【結果】Ki23057はいずれの大腸癌細胞株にも増殖抑制を示さなかったが、血管内皮細胞の増殖を濃度依存的に抑制した。Ki23057は血管内皮細胞のアポトーシスを誘導した。血管内皮細胞の管腔形成はKi23057の添加によって有意に抑制された。血管内皮細胞のVEGFR2リン酸化はKi23057によって濃度依存的に抑制された。Ki23057はヌードマウス皮下腫瘍の腫瘍増殖抑制を示し、有意に血管新生の抑制を認めた。また、ヌードマウス肝転移モデルではKi23057は肝転移を有意に抑制した。 【結論】Ki23057は大腸癌の増殖及び肝転移に対して有用な血管新生阻害剤である可能性が示唆された。
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