昨年度の研究結果から、Ki23057は大腸癌細胞の増殖を抑制するのではなく、血管内皮細胞の増殖を抑制することにより、大腸癌の増殖、肝転移を抑制することが判明した。実際に臨床応用するためにはKi23057の単独投与ではなく、抗癌剤やその他の分子標的薬との併用療法が有用であると推測された。Ki23057は経口薬であり、併用薬剤も経口薬であることが望ましいと考え、フッ化ピリミジン系経口抗癌剤であるS-1およびCOX-2inhibitorであるetodolacを用いてそれぞれ単独および併用による、大腸癌の増殖、浸潤あたえる影響をin vitroで検討し、肝転移抑制効果についてヌードマウス肝転移モデルを用いて検討した。その結果、S-1は大腸癌細胞の増殖を抑制したが、浸潤能には影響を与えなかった。一方、etodolacは大腸癌細胞の増殖を抑制しなかったが、浸潤能を抑制した。また、ヌードマウス肝転移モデルを用いた肝転移抑制効果の検討では、S-1あるいはetodolac単独投与において抑制効果を認めたが、併用することによりさらなる抑制効果を認めた。以上より、今後Ki23057も加えて大腸癌の増殖、浸潤、転移に対する併用効果を検討していくとともに、大腸癌以外の癌に対する効果についても検討していく予定である。
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