本研究では、マウス潰瘍性大腸炎モデルであるDSS腸炎に、Bcl-XL遺伝子発現アデノウイルス・キトサン複合体を経口あるいは注腸投与し、DSS腸炎の発症予防・治療効果を検討した。 まずlacZ遺伝子アデノウイルス・キトサン複合体を作製し、経口あるいは注腸投与にてマウスにおける腸管ならびに各臓器における遺伝子発現性を検討した。経口投与では、胃および上部小腸に遺伝子発現が認められたが、大腸では遺伝子発現は認められなかった。注腸投与では、大腸に特異的な遺伝子発現が認められた。しかしアデノウイルスベクターの注腸投与に比較すると、遺伝子発現の程度は弱かった。 DSS腸炎に対するBcl-XL遺伝子発現アデノウイルス・キトサン複合体の経口投与では、発症予防効果・発症後治療効果は認められなかった。一方、注腸投与では粘膜障害の程度が軽く、発症予防効果を認めた。しかし、アデノウイルスベクターの注腸投与に比較すると、発症予防効果は弱かった。またアデノウイルス・キトサン複合体、アデノウイルスベクターの双方において、発症後治療効果は認めなかった。 以上の知見から、アデノウイルス・キトサン複合体の経口投与にて上部消化管に、注腸投与にて大腸に各々臓器特異的な遺伝子発現が微量ながら得られることが明らかとなり、消化管への安全な遺伝子デリバリーシステムとしての可能性が示唆された。しかしながら、疾患モデルの予防・治療効果を得るには、潰伝子発現力が弱いことが判明した.
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