研究概要 |
進行・再発の消化器癌に対して,CDDP+5-FUを中心とした化学療法に,Paclitaxelの併用療法が試みられている.しかし,その奏功率は依然として低く,背景には腫瘍細胞の持つ薬剤耐性機構がある.近年,ゲノムのジャンク配列と思われ,注意の払われていなかったnon-codingが注目を浴びている.特に,miRNAは,複数のmRNAの3'-非翻訳領域に結合し,mRNAの分解あるいは蛋白質の翻訳抑制に働いている.本研究では,消化器癌において薬剤耐性遺伝子の発現制御に関わるmicroRNA(miRNA)を定量的に解析し,薬剤耐性獲得機構との関連を検討した.type III β-tubulinプロモーター領域との結合に必要なdsRNA特定には至らなかったが,type III β-tubulinの発現には,intron 1領域のhypermethylationならびにヒストンの脱アセチル化強く関与している所見が得られた.また,ABCB1の過剰発現にはhsa-miR-451,hsa-miR-498のmiRNAの発現低下が関連していた.消化器癌の薬剤体制機構にはmiRNAの発現異常が関与している可能性が示唆され,新らたな治療戦略の立脚につながると考えられた.
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