研究概要 |
胸部食道扁平上皮癌におけるケモカインレセプターCCR7の発現とリンパ節転移及び予後との関連を検討した。 対象は当院で根治術を施行した胸部食道扁平上皮癌患者105例.これらに対し,抗CCR7抗体を用いた免疫組織化学的手法を用いて、その発現を検討した。評価は対象症例の臨床的背景を知らない医師2名により行い、そのintensity(スコア0〜2)及びproportion(スコア0〜3)を評価し、(intensity)×(proportion)≠0でCCR7陽性と判定し、分類した。結果、CCR7陽性例は105例中28例(26.7%)に認めた。CCR7陽性例は、リンパ節転移の頻度が有意に高く28例中23例(82.1%)に転移を認めた(p=0.04)。また、予後に関しても5年全生存率(OS)び無再発生存率(DFS)に関しても有意な差を認めた(OS/DFS:p=0.02/p<0.01)。T1症例における検討ではCCR7陽性例は61例中17例(27.9%)、リンパ節転移率は17例中10例(58.9%)で(p<0.01)、OS、DFSにおいても同様に有意な差を認めた(OS/DFS:p=0.04/p<0.01)。食道扁平上皮癌におけるCCR7発現は、リンパ節転移頻度及び再発生存期間に関して有意な相関を認めた。特に、T1症例における検討では、EMR後のリンパ節転移予測因子としても有用である可能性が示唆され、現在当院で試験的に行っている早期食道癌EMR症例におけるセンチネルリンパ節理論を用いた低侵襲治療と組み合わせたテーラーメード治療へ応用できる可能性が示唆された。現在、リンパ節における局所免疫機構など詳細な機能解析などを通じてその役割の解明途上であり、同時に食道癌細胞株を用いたマウスリンパ節転移モデルを作製し、in vivoにおける転移機序の解明も同時に進めている。CXCR4に関しては、同様に105例の検討でリンパ節転移との有意な相関は認められたものの、遠隔転移形式及び予後との相関は認めなかったが、何らかの悪性度に関わる因子として今後も研究を進めていく。
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