大腸癌手術検体の遺伝子発現解析から大腸癌特異的に早期から高頻度に発現する新規分子として我々が同定したKU-CR4について、患者血清中に存在し診断に応用できる可能性、また抗体療法の標的分子となる可能性を検討した。GPI結合型膜蛋白質の構造をもつA型蛋白質と、シグナルペプチドをもつが膜結合領域をもたないB型蛋白質のそれぞれに特異的、あるいはA・B両方を認識するペプチド抗体を昨年度作成したが、本年度、これらを用いて大腸癌細胞株での発現を解析した結果、A型は固定した大腸癌細胞株表面に検出できたが、B型の分泌は検出できなかった。さらにA型の成熟型リコンビナント蛋白質に対して昨年度作成したポリクローナル抗体を用いることにより、大腸癌生細胞の表面にA型蛋白質をフローサイトメトリーにより検出できた。次に、大腸癌患者血中にKU-CR4が存在するかを明らかにするために、これらペプチドあるいはリコンビナント蛋白質に対する抗体を組み合わせてELISA検出系の構築を試みた結果、A型リコンビナント蛋白質に対するポリクローナル抗体を捕獲抗体、検出抗体両方に用いるサンドイッチELISAによって患者血清中にKU-CR4蛋白質を検出できた。大腸癌のステージ別では、0期で9人中1人、1期で16人中3人、2期で16人中5人、3期で16人中3人、4期で15人中に検出できたが、健常人15人中の1人にも検出された。この結果は大腸癌患者血中にA型KU-CR4蛋白質が存在し、診断に応用できる可能性を示唆するが、手術検体でのmRNA発現亢進の頻度に比べて血中蛋白質の検出頻度はかなり低く、検出の高感度化が今後の課題である。
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