EGFR過剰発現の癌に対して選択的に高濃度の抗癌剤を送り込むためにpaclitaxel封入抗EGFR抗体結合ナノ粒子(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine polymer)による殺細胞効果と抗腫瘍効果を検討することを研究の目的とした。方法として、In vitroではEGFR過剰発現細胞株A431と非発現株H69を用いて、抗EGFR抗体(マウスモノクローナル抗体:528)の有無による殺細胞効果をMTT assay法にて比較検討した。In vivoではA431とH69を背部皮下に移植したBALB/Cヌードマウスを用いて、ナノ粒子における抗EGFR抗体の有無による抗腫瘍効果を検討した。その結果としてIn vitroではナノ粒子単独、抗EGFR抗体単独ではA431、H69には殺細胞効果はなかった。A431ではpaclitaxel単独群では10ng/mlでIC50となったが、抗EGFR抗体結合群では約3.45ng/mlと低用量のpaclitaxelでIC50を得ることができた。H69ではpaclitaxel単独群・抗EGFR抗体結合群・抗体非結合群の間では殺細胞効果に差を認めなかった。また、ナノ粒子と抗EGFR抗体を結合させるときに産生されるパラニトロフェロールを測定し、反応させる抗体量を増やすとパラニトロフェロールの産生量が増えることを確認した。In vivoではA431移植ヌードマウス群では抗EGFR抗体結合群と抗体非結合群で、抗腫瘍効果に有意差を認めたが、H69移植ヌードマウス群では抗EGFR抗体結合群と抗体非結合群で、抗腫瘍効果に有意差を認めなかった。以上の結果から抗EGFR抗体結合ナノ粒子はEGFR過剰発現の癌に対して優れた殺細胞効果と抗腫瘍効果を認め、有効なdrug delivery systemの開発が期待できると考えられた。
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