食道癌治療において外科的アフローチと内視鏡的アフローチの侵襲度の差が大きいため、早期食道癌治療に対して内鏡的切除の拡大適応が期待されている。近年、食道の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)手技が開発され、大きな病変でも一括切除可能となったが、そのために引き起こす潰瘍瘢痕のために、患者はESD後に頻回の内視鏡的バルーン拡張術を受けることが稀ではない。そこで我々は、ESDに伴う人工食道潰瘍の創傷治癒の促進と狭窄の防止を目的として、自己由来の口腔粘膜上皮細胞から作製した培養口腔粘膜上皮細胞シートを潰瘍面に経内視鏡的に移植する再生医療的治療法を開発に関する研究を進めてきた(T.Ohki Gut2006;55:1704-1710)。 本研究では、平成19度の結果に基づき、全周性の食道ESDに対する口腔粘膜上皮細胞シート移植術に対する全周性に移植しうる新規デバイスの開発を開始した。バルーンタイプの移植デバイスを考案し、ex vivoの検討で23mm×23mmの正方形の細胞シート口腔粘膜上皮細胞シートあるいは線維芽細胞シートを作製し、そのバルーン型細胞シート移植デバイスを用いて、全周性のESD後の潰瘍表面に4枚を一期的に移植することに成功した。マクロでも全周性に細胞シートが移植され、またHEでも潰瘍面にシート状に移植されていることを確認した。その成果を平成20年4にSEGES(米国内視鏡外科学会)にて口演発表を行った。今後は、in vivoでの検討を行しい、さらに臨床で使用可能な状態に改良する予定である。 また実験と平行して、平成21年4月4月より培養口腔粘膜上皮細胞シートの経内視鏡的移植術のヒト臨床(世界初の消化器領域における再生医療の臨床応用)を開始しており、症例集積中であるが、現在、不可能である全周性の食道ESDの症例に対しても今後臨床応用が可能となる可能性がある。
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