研究概要 |
【目的】幽門側残胃の運動機能をRI胃排出試験を用いて評価し、健常人と比べてどの程度保たれているのか、また幽門部の運動に幽門洞枝(Latarjet枝)が必要か否かについて、前年度に引き続いて検討を加える。 【対象・方法】手術手技は以下の如く統一して行う。(1)噴門側切除範囲は1/3~1/2とする。(2)迷走神経は肝枝、幽門枝および腹腔枝を温存する。症例により幽門洞枝も温存する。(3)再建方法は10~12cmの空腸を間置する。(4)ドレナージ手術は行わない。術後の検索項目として、術後愁訴、食事摂取量、各種栄養指標、pH・胆汁モニタリング、内視鏡、RI胃排出試験などを用いて評価する。RI胃排出試験は、99mTc-DTPA添加粥食(200g,151kcal)を用いて術後1年目に行い、摂取60分後の停滞率(立位)で評価する。 【結果および考察】21年度の対象症例は8例(男性7)で、縫合不全やSSIなどの合併症はみられない。術後2ヶ月目の内視鏡検査では逆流性食道炎は全くみられていないが、食道空腸吻合部に1例、空腸残胃吻合部に2例狭窄を認め、バルーン拡張術施行。拡張後は全例に十二指腸までの挿入は可能である。また6例(75%)に残胃内に中等量の食物残渣を認めている。術後3、6、12ヶ月に術後愁訴や食事摂取量につき問診した。食後のつかえ感や膨満感はほぼ全例に認めているが、軽度であり、経過と共に軽快、また摂食量も徐々に増加している。1年経過例のRI胃排出試験では、健常人に比して遅延していたが、幽門洞枝温存群では健常人に近似しており、つかえ感も少なくQOLは良好であった。リンパ節郭清のため幽門洞枝を温存出来る症例は少ないが、幽門側残胃の正常な排出能には幽門洞枝は必要と考えられる。幽門洞枝を温存できない場合は排出が遅延するため、つかえ感や摂食不良が予想される。したがって幽門側残胃の大きさが重要であり、噴門側切除の適応は1/2以上の残胃が残せる症例に限り行われるべきである。
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