研究課題
肝虚血再灌流障害防止法のなかで、白血球・血管内皮の相互作用に着目して、超酸素分子分解酵素などを投与して防止効果を判定してきたが、これらは虚血後の肝微小循環動態を改善したものの、虚血後肝障害を十分に防ぐことはできなかった。そこで、本研究では白血球、類洞内皮相互作用以外の要因として血小板に着目して研究を継続した。生体蛍光顕微鏡を用いて虚血後の類洞内血小板動態を観察したところ、血小板は血流再開直後より類洞内皮に膠着し始め、再灌流時間の経過とともに膠着数は増加することが判明した。白血球と比較すると血小板は血流再開の早い段階(30分以内)で膠着し始めるという特徴があり、さらにほとんどの血小板の膠着する部位が門脈近傍(Zone1)であることが判った。このことは、クッパー細胞が多く存在することが知られているZone1において血小板と血管内皮の相互作用が強く働いていることを示唆するものである。そこで「再灌流直後のクッパー細胞と血小板の間の相互作用が、その後の白血球膠着を調節しているのではないか」という仮説をたてた。そして、虚血後の血小板膠着にクッパー細胞がどのように関与するかを明らかとするため、クッパー細胞除去モデルを作製し虚血後血小板動態を観察した。クッパー細胞除去群では正常群と比較して血小板膠着は3分の1にとどまり、類洞血流は保たれて肝障害も抵制されることを明らかにした。同様に白血球膠着も抑制されることが判明した。クッパー細胞の存在下で血小板は虚血再灌流後に類洞内皮と膠着し、微小循環障害へとつながることを明らかにした。
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Journal of Surgical Research (in press)
Journal of Surgical Research 149(2)
ページ: 192-198