研究概要 |
1.肝細胞癌における遺伝子発現プロファイリング 肝細胞癌に対する肝移植の際に用いられるミラノ基準内の症例においても外科切除後再発をきたす症例が認められるのに対し,ミラノ基準外の症例の中には外科切除後全く再発をきたさない症例も存在する。このようなheterogeneityは同じ肝細胞癌の中に生物学的に異なるsubgroupが存在することを示唆するものであり,Leeらはそのheterogeneityを発癌起源細胞の違いにその原因を求めている。そこで,ミラノ基準内外と再発の有無の関係からDNAマイクロアレイ法を用いて肝細胞癌の遺伝子発現プロファイリングを行い,その違いにつき検討した。現在までにROBO1,STMN1,CKAP2,CCNE1,FGFR4の5遺伝子が候補遺伝子として抽出されており,これらとCK7,CK19,ezrinと関係について検討するとともに,microRNAアレイによるプロファイリングに備えている。 2.肝細胞癌におけるezrin(Vi12 gene)の発現評価 主に免疫組織染色を用いて,ezrinの発現について検討した。正常肝組織ではezrinの発現はみられず,慢性障害肝では肝前駆細胞活性化を反映するといわれるductular reactionに強く発現がみられた。この結果はezrin発現と肝前駆細胞との関連を示唆するものである。肝細胞癌においては36%の症例にezrin発現がみられ,それらは,CK19の発現と有意に関連していることを示すとともに,ezrinの発現は独立した有意な再発危険因子であることを見出した。ただし,ezrinは炎症性浸潤細胞にも発現していることが明らかになったため,Vi12 geneの発現を組織で検討するのは不適当と判断された。 細胞株になかではJHH1株にezrinの高発現がみられたため,それに対してsiRNAを利用し,増殖能などの検討をしている。現在のところezrin発現を抑制すると増殖能が抑制されるという結果を得ている。 肝内胆管癌についてもNotchシグナルを中心に現在検討中である。
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