研究概要 |
(1)門脈結紮モデルを用いた肝細胞からの膵前駆細胞分化転換の可能性の検討 我々はマウス肝門脈一次分枝結紮モデル(70%還流枝を結紮)を用い,vitro/vivo両系から肝内在性組織幹細胞の同定・分離及び分化誘導を検討している.in vitroにおいては分離細胞成分を約4ヵ月間長期培養することに成功しており,継代可能であること及び肝・胆管細胞形質を個別に発現することを確認している.現在肝特異的組織幹細胞の単離に向け,既知の肝前駆細胞特異的細胞表面マーカーを用いたFACS解析を進行中である.in vivoにおいては,転写因子Pdx1の肝組織内発現モデルを作成している.このようなin situでのPdx1異所性発現系は既にアデノウイルスベクターを用いた系が報告されているが,同ウイルスベクターが惹起する免疫応答が肝臓から膵臓への分化転換に何らかのpositive effectを示す.このため,我々は(非ウイルス性に)プラスミド単体投与により,導入遺伝子(Pdx1)と組織幹細胞の活性化を促す刺激(肝門脈結紮)の相互作用を純粋に解析することを旨としている.この非ウイルス性遺伝子導入系では,外来性遺伝子の安定発現(約30日)と糖尿病モデルマウスに対するPdx1導入のみで,mRNAレベルでのインスリン発現をすでに確認している. (2)ES細胞由来内胚葉細胞分化誘導系における膵前駆細胞分化の検討 本分野は海外共同研究者である,小川真一郎(McEwen Centre for Regenerative Medicine,Tronto,Canada,信州大学外科所属,2007年4月より上級博士研究員としてGordon Keller labに留学中)と遂行している.同研究室ではヒトES細胞を用い,無血清培養下での内胚葉前駆細胞を経由した膵・肝前駆細胞への分化誘導条件の検討を行っており,培養条件等を相互に共有している.
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