研究概要 |
(1) 門脈結紮モデルを用いた肝細胞からの膵前駆細胞分化転換の可能性の検討 マウス肝門脈一次分枝結紮モデルを用い,肝内在性組織幹細胞の誘導及び分離に関し検討を行った.まず,門脈結紮・非結紮葉から分離した非実質細胞分画に対するコロニーアッセイを行い,最も効率的に上皮細胞様コロニーを形成しうる時期と結紮の有無について検討を行った.結果として,門脈結紮後7日目の結紮葉において,有意に高いコロニー形成率が示された.同タイミングにおいて分離された非実質細胞分画からsingle cell cloneを樹立し解析を行った結果,同細胞は液性因子と細胞外マトリックスの変更により,肝実質細胞もしくは胆管細胞の形質を有する細胞へ個別に分化することが分かった.これは,我々が分離した細胞がbipotentiallityを有することを示す,重要な結果である.このマウス門脈結紮モデルにおいて誘導されると考えられる組織幹細胞が可塑性を有することを確認するため,予備実験として同系統のマウスより分離した成熟肝細胞に対して非ウイルス性に膵臓発生特異的転写因子を導入し膵臓細胞へのreprogrammingを誘導しうるか検討した.結果としてPancreas and duodenal homeobox 1(Pdx1)及びNeurogenin 3(Ngn3)を共発現させた場合,最も効率的にインスリン産生細胞を誘導しうることが分かった.今後は,門脈結紮モデルを用いた,効率的なin vivo reprogrammingについて検討していく予定である. (2) ES細胞由来内胚葉細胞分化誘導系における膵前駆細胞分化の検討 本分野は海外共同研究者である,小川真一郎(McEwen Centre for Regenerative Medicine, Tronto, Canada,信州大学外科所属,2007年4月より上級博士研究員としてGordon Keller labに留学中)と遂行している.同研究室ではヒトES細胞を用い,無血清培養下での内胚葉前駆細胞を経由した膵・肝前駆細胞への分化誘導条件の検討を行っており,培養条件等を相互に共有している.
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