研究課題/領域番号 |
19591593
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
永井 英司 九州大学, 大学病院, 講師 (30264021)
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研究分担者 |
田中 雅夫 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (30163570)
佐藤 典弘 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教 (20423527)
高畑 俊一 九州大学, 大学病院, 助教 (50437779)
大内田 研宙 九州大学, 大学院・医学研究院, 特任助教 (20452708)
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キーワード | IPMN / qRT-PCR / パラフィン包埋サンプル / 膵癌 / DNA damage checkpoint / S100A2 |
研究概要 |
膵腫瘍の中でIntraductal papillary mucinous neoplasm(IPMN)は比較的予後の良いカテゴリーに入るが、一旦浸潤癌となれば通常型膵癌と同様にその予後は極めて不良である。現在は腫瘍径、壁在結節の大きさ、細胞診などを手がかりに手術適応の決定が試みられてきたが、充分な成果が得られていないのが現状である。これまでに、申請者らは膵液中のmRNAを定量解析することに成功し、外科切除材料を用いてIPMN内の早期癌病巣の存在診断に有用な癌関連遣伝子を同定し、その後に膵液から癌細胞のみを抽出し、同定した幾つかの癌関連遺伝子が有意に上昇していることを明らかにしてきた。平成19年度までに、申請者らは分解が強く進んでいるパラフィン包埋サンプル中のmRNAの定量解析法を確立しており、これにより、100bp程度にまで分解が進んでいるパラフィン包埋組織中のmRNAの定量解析が可能となっている。そこで、この解析手法を用いてIPMNパラフィン包埋組織中のmRNA定量解析法を確立した。パラフィン包埋サンプルの背景には、詳細・膨大な臨床データ(病理解析、癌進展過程、血行性転移能、リンパ節転移能、予後、抗癌剤治療効果)が存在する。本年度は、従来の手法によってはできなかったパラフィン包埋サンプルによる多数症例によるmRNA定量解析と臨床データの比較分析をおこなった。同時に通常の免疫染色による評価も平行して行っており、その結果、IPMNでは腺腫の段階からDNAdamage checkpoint経路が活性化し、その不活性化が腫瘍の進展に重要な役割を担っていることを初めて見いだし、Clinical Cancer Research誌に報告している。また、従来のマイクロダイセクションを用いた解析により、S100A2やS100A6の発現変化がIPMNにおいても関連していることをJournal of Pathology誌やCEBP誌に報告している。さらに、EMTに関与することが報告されているTwistが通常の膵癌と比べてIPMNの初期にはあまり関与していないことも見出しており、International Journal of Cancerに報告している。
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