研究課題/領域番号 |
19591594
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
石川 晋之 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (80419639)
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研究分担者 |
馬場 秀夫 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授 (20240905)
広田 昌彦 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (80284769)
高森 啓史 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 講師 (90363514)
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キーワード | ORP5 / HDAC5 / SREBP2 / 膵癌 / コレステロール合成経路 / スタチン |
研究概要 |
ハムスターの膵癌モデルから、浸潤・転移能の異なる二種類の細胞株を樹立し、この二種類の細胞株における遺伝子発現プロファイルの違いを検討したところ、浸潤・転移関連遺伝子としてOxysterol binding protein related protein5(ORP5)を単離した。ORP5を浸潤・転移能の弱い細胞株に導入すると、その浸潤能が上がり、siRNAで抑制すると、浸潤能が下がった。ORP5の発現を膵癌切除標本で免疫染色したところ、ORP5を発現している膵癌患者は有意に予後不良であった。特に1年生存率はORP5陰性群が73.9%に対してORP5陽性群が36.4%であった。 ORP5を発現、あるいは抑制することで動く分子を同定するために、cDNAmicroarrayを行った。ORP5を強発現させることで誘導され、抑制することで発現が減弱する分子としてHDAC5,TGFβが検出された。ORP5が脂質代謝に関わる分子であることが予想されることから、これらの分子がコレステロール合成経路に関わっていると考えた。事実、ORP5を導入することでSREBP2が発現し、ORP5を抑制することでSREBP2が抑制された。さらに、HDAC5のプロモーター領域にSREBP2の結合部位が存在することをChIPで証明した。つまり、ORP5発現という機能を得た膵癌細胞は、コレステロール合成経路を活性化し、その下流遺伝子であるHDAC5を発現することで浸潤・転移能を獲得していると考えられた。このことは、抗コレステロール血症治療薬であるスタチン(HMG・CoA阻害剤)がなぜ膵癌抑制効果を示すのかという、10年近く解明されていなかった問題の答えとなるものである。
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