研究概要 |
癌-間質相互作用からみた膵癌脈管新生機構を分子生物学的に解明するために,膵癌細胞と間質細胞の共培養により脈管新生能を比較検討し,そこに関わる既知未知のサイトカインを同定することを目的とした。当科では膵癌細胞株を高肝転移株と非肝転移株に分類しており,これらの膵癌細胞株を用いた.血管内皮細胞としてはHUVECを用い、リンパ管内皮細胞は新生児皮膚由来のLECを用いた。このLECは抗リンパ管内皮細胞特異抗体のpodoplanin陽性を確認している. 膵癌細胞と線維芽細胞,HUVECをdouble chamber methodで共培養し,HUVECを染色して管腔形成能を評価した結果、肝転移能の高い膵癌細胞はHUVECの管腔形成能を亢進することを確認した。 また膵癌細胞と線維芽細胞,LECをdouble chamber methodで共培養し,LECを染色してtube-like formationを評価した結果、Mia PaCa2はtube-like foramtionを亢進し,BxPC-3は亢進しないことをつきとめた。 Real time PCRでは、Mia PaCa2ではVEGF-Cの発現が亢進し、BxPC-3では亢進していないことが判明した。同様にELISAでもMia PaCa2ではVEGF-Cの発現が亢進し、BxPC-3では亢進していないことが判明した。 またLEC、HUVECはともにそれ単独ではtube-like foramtionを認めず、繊維芽細胞が存在してはじめてtube-like foramtionを形成することが判明した。以上の結果から膵癌脈管新生には癌細胞のみではなく、癌-問質相互作用があって初めて形成されうるものと考えられ、更なる検討を行うことにより、新たな分子標的治療のターゲットとなりうると考えられた。
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