研究概要 |
【目的】当該研究課題では,肝癌-肝星細胞の「がん間質相互作用」におけるAngII(angiotensin II)-ADAM(adisintegrin and metalloprotease)-EGFR(epidermal growth factor receptor)のクロストークの意義をin vitro,in vivoにおいて解析し,肝癌治療におけるADAM阻害剤の有効性を検証する.【昨年度から本年度の計画】肝細胞癌株および肝星細胞初代培養細胞株における,AngII-ADAM-EGFRのクロストークの検証ヒト肝癌培養細胞株6株(Alexander,HepG2,HLF,HuH7,Li-7,PLC/PRF/5),ヒト肝星細胞初代培養細胞株1株(LI-90),ラット肝星細胞初代培養細胞株1株を用いて,低分子化合物・中和抗体・siRNAによるクロストークの阻害実験を行った.加えて四塩化炭素ラット肝炎・肝硬変モデルを作製し,星細胞を分離採取後in vivo/in vitroモデルによる解析を追加した. 【結果】(1)肝癌細胞株,肝星細胞ではそれぞれオートクライン,パラクライン,ジャクスタクライン的に的にAngII-ADAM-EGFRのクロストークが細胞の増殖,浸潤能の亢進に寄与していることが明らかにされた.(2)AngIIの選択的阻害剤は肝細胞癌におけるAngII-ADAM-EGFRのクロストークを遮断し,細胞の増殖,浸潤能を低下させた。(3)AngII-ADAM17-EGFRの効果阻害にARB, TAPI-IIが有効であり,腫瘍細胞の増殖能の抑制が有効であることが示された.(4)肝星細胞のin vivo/in vitroモデルによる解析では,AngIIの抑制によりADAM17-EGFRのクロストークの抑制が可能であった.【意義・重要性】本研究におけるin vivo/in vitroの研究成果は肝癌細胞のprogressionをAngII阻害剤によって抑制できる可能性を示唆しており,肝癌・肝硬変患者において,現在降圧剤として汎用されているARBを肝癌の進行抑制や,肝線維化抑制による肝不全予防に役立てる可能性を示唆しており意義深い.
|