研究概要 |
我々は、正常胆管上皮細胞株で強く発現し、肝内胆管癌由来細胞株(HuCCT1、MEC)で発現が消失または著明に減少しているmiRNA、胆管上皮細胞特異的miRNA(miR-22,-125a,-127,-199a,-199a^*,-214,-376a,-368,and-424)を見出した。培養細胞(HuCCT1)に胆管上皮特異的miRNAを過剰発現させ、miRNAが制御している標的となるmRNAの同定を目的としたプロテオミクス解析をおこなった。直接増減の変動をきたした蛋白スポットを2次元電気泳動により抽出し、質量分析をおこない、蛋白分子を同定した。この解析により、胆管上皮細胞特異的miR-368とmR-376aの標的mRNAがそれぞれgrowth factor receptor bound protein-2(Grb2)とWilms tumor associated protein(WTAP)であることを示唆する結果を得た。Grb2は、受容体チロシンキナーゼからの様々なシグナル伝達経路を仲介する鍵となるアダプター蛋白質であり、癌化、癌の増殖と転移に極めて重要な役割を果たしている。WTAPは、WT1(Wilms腫瘍遺伝子の1つ)に強く結合する蛋白質として見出され、WT1の転写調節を介した、細胞増殖・アポトーシスへの関与が示唆されている。これらを考え合わせると、今回の結果は、我々が見出した胆管上皮細胞特異的miRNAが、胆管上皮の癌化、肝内胆管癌の増殖と転移に関連するシグナル伝達経路の調節に関与することを示唆する新知見である。今後、特異的miRNAの転写後翻訳調節が肝内胆管癌関連シグナル伝達経路にどのように関わるのか分子レベルでの機能解析研究と、in vivo解析(臨床解析)による肝内胆管癌の新規バイオマーカー開発のための基盤研究が課題として残された。
|