研究概要 |
肝細胞増殖因子(HGF)のアンタゴニストであるNK4を用いて肝癌に対する遺伝子治療研究を行なっている。現在までの研究でHGFアンタゴニストNK4は、HGFの癌-間質相互作用を断ち、強力な腫瘍血管新生抑制および腫瘍の浸潤・転移を抑制し、"tumor dormancy"の状態に誘導しえたが完全消失には至らなかった。本研究ではNK4導入に加え腫瘍細胞のDNA合成および分裂を阻害する化学療法レジメを併用し、臨床に応用しうる高度進行肝癌に対する新しいstrategyを確立することを目的とした。NK4および5FU+CDDPの至適投与量を検討すべくヒト肝癌細胞株Huh7を用いて以下の群に分けて検討を行った。:1.control,2.LacZ,3.NK4,4.CDDP+5FU,5.LacZ+CDDP+5FU,6,NK4+CDDP+5FU.IC値を複数に設定し、MOI30で感染させて経時的に検討行ったところin vitroにおいてNK4は化学療法を併用しても肝癌増殖抑制に有意に働かなかった。これはin vitroにおいては新生血管の寄与が認められないためであると判断されたのでin vivoにおける検討に進むこととし、マウス肝癌モデルに先立ち治療効果判定が容易なマウス皮下xenograftモデルを用いて検討中である。NK4遺伝子導入法としてはヒトへの臨床応用を鑑みるにウイルスベクターを用いないnaked plasmid vectorの投与を検討したが、NK4発現アデノウイルスベクターに比して血清中のNK4発現量は1/200(5.2ng/ml)であり、持続期間も48時間でほぼ0になることより治療効果は期待できないと判断、今後のin vivoにおける検討にはNK4発現アデノウイルスベクターを用いて研究を進める。
|