研究概要 |
本研究の目的は,ラット肺移植モデルにおいて,1.レシピエント由来の細胞による移植肺血管内皮細胞再生が観察されるかどうか,2.同系ラットの骨髄から採取し培養によって誘導した血管内皮前駆細胞をレシピエントラットに静脈内投与(細胞移植)することで,肺血管内皮細胞の再生が促進され得るかを検討することである.まずラット肺は大動物に比べ虚血・再灌流への感受性が強く,6~12時間の保存で著明な肺水腫を呈することを観察した.次いで,SDラットをドナー,GFPtgSDラットをレシピエントとする左肺同所性移植を行い,移植肺にGFP(+),CD31(+)の細胞,つまりレシピエント由来の肺血管内皮細胞が移植肺内に存在することを発見した.同じ目的で,雌性Lewラットをドナー,雄性Lewラットをレシピエントとする同系肺移植を行い,移植肺内に抗CD31抗体(+),Y染色体(+)の細胞がみられるか否かについて検討を試みたが,FISHの手技を確立するに至らなかった.GFPtgSDラットを用いたモデルで,レシピエント骨髄の移植によりレシピエント由来の肺血管内皮細胞の増加がみられるか否か,そしてこれが移植肺の虚血・再灌流傷害を抑制し得るかにつき研究を継続していく予定である.一方,肺組織からの幹細胞の分離を試み,それに成功した.この際に肺組織を保存するのに用いる肺保存液の組成によって,分離される幹細胞の数に違いがあることを発見し,成果を発表した.
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