研究概要 |
【はじめに】F344(RT1^<1v1>)→WKY(Rrl_1)のMHC非完全ミスマッチのラット肺移植モデルにおいて,V型コラーゲン[col(V)]の経口寛容が拒絶反応を抑制することを報告してきた。MHC完全ミスマッチのBN(RTln)→WKYのモデルにおけるcol(V)によるTregs誘導が免疫抑制剤投与量を減量する可能性につき研究した。【方法】250〜300gのBN, WKYの雄ラットを用い,コントロール群(A),COl(V)経口投与群(B),サイクロスポリン(C_sA)少量投与群(C),col(V)経口投与+C_sA少量投与群(D)の4群においてBN→WKYの左肺移植を行った。各群,1週間後に犠牲死させ病理像によるrejection score評価(0〜4),TGF-βおよびFoxP3による免疫組織化学的評価と血清中TGF-βの測定を施行した。【結果】Rejection scoreはA:4.0±0.0, B:3.4±1.2, C:3.2±0.75,D:1.2±0.4とD群において有意に拒絶反応が抑制されていた。血清TGF-βはA群に比べ, B, C, D群は高い傾向にあったが4群間で有意差を認めなかった。移植肺のTGF-βの免疫染色像は, A群ではTGF-β(+)細胞の発現なく,B, C, D群で発現を認めたが,3群において有意差は認めなかった。FoxP3免疫染色像は, D群でFoxP3(+)細胞が血管、気管支周囲に有意に発現していた。【結論・考察】MHC完全ミスマッチモデルにおいて, col(V)の単独投与では拒絶反応抑制は困難であるが,col(V)にfull doseではなく,少量のCsA投与を加えることで拒絶反応を抑制できた。 Tregsの誘導が免疫抑制剤投与量の減量に結びつき,臨床応用も可能になりうることが示唆された。今後,長期モデルにおける評価と免疫抑制の機序につき研究を重ねる予定である。
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