研究概要 |
凍結保存同種心臓弁・大動脈組織(ホモグラフト)が感染性心内膜炎・感染性大動脈瘤に用いた場合に人工弁・人工血管よりも治療成績が著明に良好であることで臨床的によく知られているが基礎的レベルでのメカニズムは不明であった。 本研究では、ホモグラフトの抗感染性についてTrp代謝酵素Indoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)に着目し、ラット同種移植後グラフト内におけるIDOの発現とグラフト抗感染性との関連性について、特にMRSAと混合培養することによって移植後の血管組織が細菌増殖抑制能を有するか否かについて検討した。まず、同種移植後組織の抗感染性を確認する上で、同種移植(Lew vs.BN)の刺激を受けた血管組織をMRSAと培養したところ、自家移植(Lew vs.Lew)組織を用いた場合に比べてMRSAの増殖速度抑制の効果を著明に認めた。Real-time PCRによる移植後組織内における炎症性マーカー遺伝子発現の検討においては、同種移植後組織内ではIFNγおよびIDOの発現が著明であったが自家移植組織内においてはこれらの遺伝子発現は明らかではなかった。免疫組織学的検討においては、外膜側の炎症細胞浸潤を認めた部位に一致してIDOの発現を高度に認めた。 今後の計画として、抗感染性物質を同定しその活性条件や人為的に合成が可能であるか調べる。実際に抗感染性を発揮するに必要な投与量を検討し臨床応用の可能性について検討する予定である。
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