研究概要 |
肺移植における心臓死ドナー肺の利用において、有効なDrug Delivery System(DDS)の開発が必要である。潜在的な肺保護薬でありながら,単独では吸入投与に向かない薬剤について,CHPをDDSキャリアとして吸入投与し,生体だけでなく心臓死後投与での動態や薬理作用の検討を行うことを考案して、実験を開始した。まず、in vivoでの吸入投与されたCHPの動態を検討した。具体的には、CHP,アミノ基を付加したCHP-NH2を作成し、Qdot(R)の内包を行った。(i)Qdot溶液,(ii)CHP-Qdot溶液,(iii)CHPNH2-Qdot溶液を吸入した。1時間後に、肺を摘出し蛍光顕微鏡にて観察を行なったところ、吸入群では、(iii)が最も肺で蛍光を示した。この実験結果から、CHP-NH2が肺にトラップされるメカニズムに大いに関与している可能性が指摘された。CHPおよびCHP-NH2のDDSでの利用という意味において非常に興味深い知見と思われた。次に、心停止モデルでの吸入実験を行うために、心停止の導入の方法を検討した。この実験結果からは、心室細動で心停止を誘導することの有用性が示された。これは、実際の心停止の設定において、肺の状態の評価を行う上でも重要な知見である。さらに、今後の実験での肺の状態の評価となるマーカーを決定するために心停止モデルで変動する分子マーカーをあらかじめ検討することとした。マウスを用い、心停止後の分子マーカーの発現を数種類検討した。結果として、Claudin-5やVE-cadherinなどの細胞間結合のマーカーの変動は心停止後4時間立たないと起こらなかったが、IL-lbetaなどのサイトカインは心停止後一時間でも有意に変動した。これにて、肺評価のマーカーを決定することができた。
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