研究課題
本研究では徐放化ゼラチンシートにSDF-1を吸収させ、SDF-1を長期間放出することにより、末梢血幹細胞を心筋梗塞部に誘導することで心機能を改善させることを目的とした。予めG-CSFにより骨髄中から末梢血へ幹細胞を誘導し、SDF-1を吸収させたゼラチンシートを慢性心筋梗塞モデル動物に貼付することで、心機能の改善の有無を評価した.昨年度に引き続き、SDF-1徐放化ゼラチンシートの心機能改善効果を詳細に検討するため、ラット心筋梗塞モデルへの移植を行った。ラット前下行枝を結紮して心筋梗塞モデルを作製した。心筋梗塞作製後2週間目からG-CSFを投与し、骨髄中から末梢血へ幹細胞を誘導した。予め作製されたゼラチンシートにSDF-1を含浸し、心筋梗塞部を被覆するようにSDF-1含有ゼラチンシートを圧着した。SDF-1を含まないゼラチンシートを比較群とした。SDF-1移植群において心臓超音波検査により、他群と比較して心機能改善傾向がみとめられた。新生血管の誘導と左室拡大の抑制が認められリモデリング抑制効果が確認された。幹細胞マーカーであるc-kit, CD34+等の免疫染色結果から、骨髄由来の幹細胞の梗塞部への集積と血管新生による組織血流の改善による相乗効果によって、リモデリングオ抑制と心機能効果が示されたと考えられる。本研究は、細胞移植を必要とせず、成長因子とマトリックスのみで心筋再生を実現できる新たな治療法として有用である。