最新の研究成果から、心臓は肝臓や皮膚などの臓器と同様に自己再生修復機能を備えていると考えられる。しかし、心筋梗塞等によって心筋が傷害された心不全患者において、心筋の自己修復再生から心機能回復へ至る症例は一般的に存在しない。その原因の1つとして、心臓がポンプ臓器であるが故に常に被るメカニカルストレスが心筋再生に悪影響を及ぼすのではないかと推測した。本研究では、メカニカルストレスが心筋再生に与える影響について調べ、その分子・細胞学的機序を解明することを目的とする。 本年度は主に実験動物モデルの作成を行い、一般的な組織学的解析により心筋の自己再生を評価した。10週齢C57BL/6マウスを用いて心筋梗塞モデルを作成し、60分後に以下の2群に分けた。移植群(unloading群);donorとして梗塞心を摘出し、それを別のマウスの腹腔内へ異所性に心移植を行った。梗塞心の冠血流は保たれたまま、メカニカルストレスがかからない状態で拍動する。対照群(loading群):心筋梗塞を作成後、Sham手術(開腹)のみを行う。梗塞心はメカニカルストレスがかかった状態で拍動する。心筋梗塞を作成後、3、7、14、28日目に梗塞心を摘出し、心筋障害の程度を定量評価した。心室重量はunloading群では徐々に減少していった。一方、loading群では14日目に一旦減少したが、28日目で再び増加した。さらに、組織学的解析の結果、unloading群ではloading群と比較して左室壁厚が保たれており、梗塞面積も減少していることがわかった。 以上の結果から、メカニカルストレスを減らすことにより、心筋障害が軽減されることが示唆された。
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