ビーグル犬(体重:16-20kg)を用いた。全身麻酔を行い、臨床と同様の方法にて人工心肺を確立し心停止を得た。3-D ultrasound sonomicrometer用のcrystal sensorを僧帽弁輪に6個、前・後乳頭筋基部に心外膜側より2個縫着した。その後、加温・酸素化したKrebs-Henseleit液を上行大動脈および左心房に灌流し心拍動モデルを作製した。上記のcrystal間の距離をDigital3-D ultrasound sonomicrometryを用いて測定し、同時に心臓内視鏡による直接観察により僧帽弁輪と僧帽弁の開閉状態を観察した。心臓脱転時、脱転+左回旋枝閉塞常態において検討した。なお左室の拡張末期圧を10cmH_2Oにコントロールした。 心臓脱転のみでは、心臓内視鏡の観察において僧帽弁の開閉状態に正常と比較して変化は認められなかった。また、僧帽弁輪の形状および前外側交連-前乳頭筋、後内側交連-後乳頭筋間それぞれの距離の変化はなかった。左回旋枝閉塞では、全例において心臓内視鏡の観察により後内側交連部の僧帽弁閉鎖障害を認めた。また、左回旋枝閉塞状態では、明らかな後内側弁輪の拡大を認めた。しかし、前外側交連-前乳頭筋間、後内側交連-後乳頭筋間のそれぞれの距離には変化は認められなかった。 左回旋枝閉塞(左室後側壁の虚血)による、僧帽弁輪後内側の弁輪拡大は虚血性僧帽弁逆流の1つの原因となり得ると考えられた。また、その逆流発生には、弁輪-乳頭筋の距離は関係しなかった。
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