生後2-3日目の新生児Wistarラットから清潔操作下に心臓を摘出、ハサミで細分化した後、トリプシンで細胞を単離した。単離した細胞(2.5×10^6個)、ラット由来のタイプIコラーゲン、2倍濃度の培地を混合、NaOHでpHを調節した心筋細胞混合物を作成した。同混合物をドーナツ型の鋳型に注入し、37℃インキュベートによるゲル状化の後、培地(DMEM、10%馬血清、2%鶏胎児抽出物、ペニシリン・ストレプトマイシン)を追加し培養を行った。7日間の培養の後、周期的な拡張刺激(10%の拡張、2Hz)を与えるストレッチャーに移動し、12日目まで培養を続けた。心筋細胞とコラーゲンの混合物は、培養2-3日目には内側の鋳型の周囲に凝集を初め、同時に、顕微鏡下に細胞の拍動が観察された。培養7日目の組織のストレッチャーへの移動時には組織の拍動が何とか肉眼的に確認できるようになり、培養12日目には容易に組織の拍動が確認出来た。 収縮試験として、37℃の通気したTyrode液中で初期長を変えて収縮力を測定し最適な長さを決定した後、等尺性収縮力測定を行い、続いて外液中のカルシウム濃度(0.2mMから2.8mM)を変化させた時の収縮力、収縮速度、弛緩速度を測定する予定であった。しかし、現状では初期収縮力の測定は完了しているが、外液中のカルシウム濃度に対する収縮力の変化は確認出来ていない。同組織が異常な心筋組織に成長している可能性がある為、SERCA2a、Phospholamban等、細胞内のカルシウムハンドリングに関連する遺伝子の発現等の検討によって、異常な反応の原因を解明しようとしている。正常な入工心筋組織を作成できるようになれば、早急にIGF-1の収縮力に与える効果の有無、増強効果があるなら添加の至適条件を決定する予定である。
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